東京地方裁判所 昭和36年(行ウ)135号 判決 1971年12月20日
原告 宮崎貞利
被告 東京国税局長
安川七郎
右指定代理人 樋口哲夫
<ほか三名>
主文
原告の請求はいずれもこれを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
原告は「被告が昭和三六年一二月二二日付をもってした原告の昭和三二年分、昭和三三年分および昭和三四年分の所得税賦課決定処分に対する審査請求を棄却する旨の決定はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は主文同旨の判決を求めた。
第二原告主張の請求の原因
一 原告は洋紙販売および不動産賃貸を業とするものであるが、原告の昭和三二年分、昭和三三年分および昭和三四年分の所得税につき左表記載のとおり中野税務署長に対し確定申告書を提出した。
申告年度
申告年月日
総所得金額
所得税額
昭和三二年
昭和三三年三月一五日
三二六、七九八円
一二、二〇〇円
昭和三三年
昭和三四年三月一二日
三〇三、二〇四円
六、五〇〇円
昭和三四年
昭和三五年三月九日
三二〇、五八三円
五、八八〇円
二 ところが、同署長は昭和三五年一二月二四日付をもって左表記載のとおりの更正処分および過少申告加算税賦課決定処分をした。
課税年度
不動産所得金額(円)
事業所得金額(円)
総所得金額(円)
所得税額(円)
加算税額(円)
昭和三二年
一二〇、〇〇〇
一、四七六、一六九
一、五九六、一六九
三七二、九三五
一八、〇〇〇
昭和三三年
一二〇、〇〇〇
八七二、三六二
九九二、三六二
一四八、七五〇
七、一〇〇
昭和三四年
一二〇、〇〇〇
九一四、四三六
一、〇三四、四三六
一五三、〇〇〇
七、三五〇
三 原告は右各処分を不服として同月二八日同署長に対し再調査の請求をしたところ、右再調査の請求は審査請求とみなされ、被告は昭和三六年一二月二二日付をもって右審査請求を棄却する旨の決定をなし、その通知はその頃原告に送達された。
四 しかしながら、右課税処分を維持した被告の右審査決定は原告の事業所得金額を過大に誤認した違法があるから、右審査決定の取消を求める。
≪以下事実省略≫
理由
一 原告主張の請求原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
そこで、被告のした前掲審査決定の適否について判断する。
二 原告は、右決定は事業所得金額を過大に誤認した違法がある旨主張するので、以下この点について判断する。
各係争年分の必要経費額が被告主張額であることは当事者間に争いがない。そうすると、各係争年分の事業所得金額に関する争点は総収入金額がいくらであるかの点に帰着するので、以下この点について検討する。
(一) 原告は右係争年分の総収入金額を推計により認定するのは違法である旨主張する。
しかし、原告の納税申告が青色申告書によるものでないことは当事者間に争いのない事実であるところ、≪証拠省略≫によれば、原告が係争年分の事業所得の総収入金額を明らかにする売上帳、現金出納帳、受取手形記入帳等の帳簿書類を備えていなかったこと、売上伝票、請求書、領収書等の原始記録も一部しか保管していなかったこと、原告に対し通常可能な調査方法を講じてもその総収入金額の実額を把握する手懸りがえられなかったことが認められるから、右総収入金額を認定するにつき推計方法を採用することは、その推計方法が合理的であるかぎり、違法ということはできない。
そこで、被告主張の推計方法が合理的であるか否かについてみるに、右推計方法は原告が預金者であると認められる預金口座の入金総額から事業収入とは明らかに無関係な預金利息、預金相互の振替、移動による入金、手形割引代金の入金および事業収入による入金と認められるもののうち前年分の売上と認められるものを控除し、これに翌年に入金されたもののうち当年分の売上と認められるものを加算して総収入金額を推計するものであり、≪証拠省略≫を総合すれば、原告は洋紙の売上収入を預金口座に預金していたこと、原告の収入源は不動産賃貸による収入のほか洋紙の販売による収入がそのほとんどであったこと、原告は不動産賃貸による収入を預金していなかったこと、等が認められるから、本件において右推計方法により総収入金額を認定することは合理性があるというべきである。
なお、原告は審査決定を維持するため訴訟において新たな資料を追加して主張することは許されないから、昭和三二年および昭和三三年分の総収入金額の算定につき原告名義の大同信用金庫中野支店納税準備貯金口座を、また、昭和三四年分の総収入金額の算定につき右貯金口座のほか、原告名義、宮崎節名義、宮崎一名義、宮崎一郎名義、宮崎二郎名義の各大同信用金庫中野支店普通預金口座、宮崎英利名義、宮崎一郎名義、宮崎二郎名義、宮崎三郎名義、宮崎四郎名義の各同金庫中野支店定期預金および宮崎節名義の三菱銀行中野支店普通預金口座の存在を追加して主張することは許されない旨主張するが、右預金口座の追加主張は単なる攻撃防禦方法にすぎないから、原告の主張するような理由で右預金口座の存在の追加主張が制限されるものではないといわなければならない(民訴法一三七条参照)。
(二) 次に、各係争年分の総収入金額について検討する。
1 昭和三二年分について
(1) 宮崎幸利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(三八〇、四四三円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三二年中における入金総額が八四九、六一六円であることは当事者間に争いがない。
右口座の預金者が原告であるか原告の妻節であるかにつき当事者間に争いがあるので、まずこの点について判断する。
同口座は原告が開設したものであること、同口座の昭和三二年三月二日入金の三〇〇、〇〇〇円は原告の第百生命の貯蓄保険の満期支払金であること、同年八月一七日入金の三〇、〇〇〇円および同年一二月二八日入金の三〇、〇〇〇円のうち一五、〇〇〇円は小切手による入金であることはいずれも当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、右節にはなんら所得がなく、原告の家族のうち収入のあるものは原告しかないことが認められるから、これらの事実よりすれば、同口座の預金者は原告であると認めるのが相当である。
右につき原告は種々の観点から預金者は節であると主張するが、そのような事実は原告本人尋問の結果によっても認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張は採用することはできない。
そうすると、同口座の昭和三二年三月一八日入金の二、五五五円、同年九月九日入金の四、八一二円、同月一五日入金の一、一八四円および同年一〇月三日入金の六二三円が預金利息の入金であること、同年一〇月三日入金の一六〇、〇〇〇円が預金相互の移動による入金であること、同年三月二日入金の三〇〇、〇〇〇円が前示貯蓄保険の満期支払金を入金したものであることはいずれも当事者間に争いがないから、その合計四六九、一七三円を右入金総額八四九、六一六円から控除した三八〇、四四三円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(2) 宮崎英利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(七三五、三六〇円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三二年中における入金総額が一、三三九、八九七円であること、右入金総額から被告主張の六〇四、五三七円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は右入金総額からさらに同口座の(イ)昭和三二年三月三〇日入金の六〇、〇二〇円のうち五〇、〇〇〇円、(ロ)同年六月一五日入金の三三〇、〇〇〇円、(ハ)同年一一月三〇日入金の一〇〇、〇〇〇円を控除すべきであると主張する。しかし、原告の右主張は以下のとおり採用することはできない。すなわち、
(イ)について
原告は、右五〇、〇〇〇円は同日同口座から払出した五〇、〇〇〇円を再び預金したものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
右三三〇、〇〇〇円が八木康二から受領した貸金の返済金であることは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、原告が八木に右金員を貸与したのは昭和三二年二月頃であったことが認められる。
原告は、右貸付金は手持現金のうちから出したものである旨主張するが、本件全証拠をもってしても原告がその主張するような手持現金を有していたことは認めるに足りない。
ところで、≪証拠省略≫によれば、原告の事業所得以外の所得は年間一二〇、〇〇〇円程度のものであることが認められるから、この事実に前段認定のように原告の手持現金支出の事実が認められないこと、貸付日が前示のとおり昭和三二年二月頃であることを合わせ考えると、右貸付金は昭和三二年分の売上収入から出されたものと推認することができるので、右入金総額から右三三〇、〇〇〇円を控除する理由はないといわなければならない。
(ハ)について
原告は右一〇〇、〇〇〇円は手持現金のうちから出したものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右総入金総額一、三三九、八九七円から右六〇四、五三七円を控除した七三五、三六〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(3) 原告名義の富士銀行中野支店当座預金口座(一四、六〇四、八三四円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三二年中における入金総額が一五、四三四、五五二円であること、右入金総額から被告主張の一、四七二、二四六円を控除すべきこと、同口座の昭和三三年一月六日入金の五〇、二二〇円のうち六、二二〇円、同年二月七日入金の五〇、〇〇〇円、同年三月八日入金の五三、〇〇〇円を昭和三二年分の売上として加算計上すべきであることは当事者間に争いがない。
原告は、右入金総額から被告主張のほか、同口座の(イ)左表(A)記載の各入金の合計四九九、一八五円、(ロ)左表(B)記載の各入金の合計一四〇、五八〇円、(ハ)昭和三二年三月一六日払出の五七、六八〇円相当額、(ニ)同年一〇月一七日払出の一一七、二〇〇円、同月二三日払出の一〇五、二〇〇円相当額、(ホ)同年一月五日入金の一四〇、一一〇円のうち六、九六〇円、(ヘ)左表(C)記載の各払出の合計一五八、五〇〇円相当額、(ト)左表(D)記載の各払出の合計三〇八、三八四円相当額、(チ)左表(E)記載の各払出の合計一五〇、七五〇円相当額を控除すべきであり、また、(リ)被告主張の左表(F)記載の各入金の合計五三三、三〇八円は昭和三二年分の売上ではないから、これを加算計上すべきでないと主張する。
(A)表 合計四九九、一八五円
入金日
入金額のうち控除すべき額
(1)
三二・七・四
三〇、〇〇〇円のうち二一、四八五円
(2)
〃・一〇・一九
三〇、〇〇〇円のうち二〇、〇〇〇円
(3)
〃・七・一一
一二六、〇〇〇円のうち一一五、〇〇〇円
(4)
〃・九・一二
四〇、〇〇〇円のうち三八、〇〇〇円
(5)
〃・一〇・一
一九〇、〇〇〇円のうち一七三、〇〇〇円
(6)
〃・〃・三
三五、〇〇〇円のうち三〇、〇〇〇円
(7)
〃・一二・三〇
五二、〇〇〇円のうち四〇、〇〇〇円
(8)
〃・七・三〇
三一、五八五円
のうち六一、七〇〇円
(9)
〃・一〇・一
一〇、〇〇〇円
(10)
〃・一一・九
二八、五三五円
(B)表 合計一四〇、五八〇円
入金日
入金額(円)
(1)
三二・九・五
一五、〇〇〇
(2)
〃・八・二四
九、〇八〇
(3)
〃・九・一四
九〇、〇〇〇
(4)
〃・〃・二八
四、五〇〇
(5)
〃・七・一五
二、〇〇〇
(6)
〃・一〇・二八
一〇、〇〇〇
(7)
〃・一二・二八
一〇、〇〇〇
(C)表 合計一五八、五〇〇円
払出日
払出金額(円)
(1)
三二・二・六
一〇、〇〇〇
(2)
〃・〃・二一
四、八〇〇
(3)
〃・四・二四
一一、〇〇〇
(4)
〃・五・八
一五、〇〇〇
(5)
〃・六・八
七、〇〇〇
(6)
〃・〃・一七
二〇、〇〇〇
(7)
〃・七・一七
二五、〇〇〇
(8)
〃・〃・二七
二〇、〇〇〇
(9)
〃・八・一九
一四、五〇〇
(10)
〃・一〇・一二
一九、〇〇〇
(11)
〃・一一・二
一二、二〇〇
(D)表 合計三〇八、三八四円
払出日
払出金額(円)
(1)
三二・一・一八
四九、二九四
(2)
〃・〃・二九
一三、三〇〇
(3)
〃・二・七
一五、三〇〇
(4)
〃・〃・一八
一〇、〇〇〇
(5)
〃・〃・一九
三、三九〇
(6)
〃・三・一八
二三、五〇〇
(7)
〃・四・三
一五、三〇〇
(8)
〃・〃・〃
六二、〇〇〇
(9)
〃・五・一
一〇、〇〇〇
(10)
〃・〃・八
一三、三〇〇
(11)
〃・六・一〇
二〇、〇〇〇
(12)
〃・七・四
二〇、〇〇〇
(13)
〃・〃・九
三五、〇〇〇
(14)
〃・〃・一九
一八、〇〇〇
(E)表 合計一五〇、七五〇円
払出日
払出金額(円)
(1)
三二・八・一六
一三、五〇〇
(2)
〃・九・一三
一三、二五〇
(3)
〃・〃・一八
一三、五〇〇
(4)
〃・一〇・一六
一三、五〇〇
(5)
〃・〃・二三
三八、五〇〇
(6)
〃・一一・一八
一三、五〇〇
(7)
〃・〃・一九
四五、〇〇〇
(F)表 合計五三三、三〇八円
入金日
入金額(円)
(1)
三三・一・九
五、〇〇〇
(2)
〃・〃・〃
一九、一〇〇
(3)
〃・〃・〃
三二、〇〇〇
(4)
〃・〃・一八
六八、九八九
(5)
〃・二・八
四〇、〇〇〇
(6)
〃・〃・一九
二七、二一九
(7)
〃・三・一一
一〇〇、〇〇〇
(8)
〃・〃・〃
七〇、〇〇〇
(9)
〃・四・二四
九三、〇〇〇
(10)
〃・五・二四
七八、〇〇〇
しかし、原告の右主張は以下のとおりいずれも採用することができない。すなわち、
(イ)について
右(A)表記載の各入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は、右手形は原告主張の紙代金の支払として受取ったものであり、その際、右手形の額面金額と右紙代金との差額を釣銭として支払った旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
右(B)表記載の各入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は、右手形は手持現金と等価交換した手形である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ハ)について
右払出が同月一四日入金となった五七、六八〇円の手形が不渡りとなったことによるものであること、原告がその後右手形金の返済を受けたことは当事者間に争いがない。
原告は返済を受けた手形金を再び同口座に預金した旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ニ)について
原告は右払出金額に見合う金員を前もって手持現金のうちから同口座に預金していた旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ホ)について
原告は右六、九六〇円は前年分の売上である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ヘ)について
原告は、右(C)表記載の各払出金員は紙代金として受取った手形ないしは小切手に対する釣銭として支払ったものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ト)について
原告は右(D)表記載の各払出金額に見合う金員を手持金のうちから同口座に預金していた旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(チ)について
原告は右(E)表記載の各払出金額に見合う金員を手持現金のうちから同口座に預金していた旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(リ)について
≪証拠省略≫によれば、右(F)表の各入金は原告が富士銀行中野支店に取立委任した次表の手形による入金であることが認められる。
取立委任日 振出人
(F)表(1) 三二・一〇・二八 有限会社オーケイ美術印刷所
〃(2) 〃・一一・八 日本光芸株式会社
〃(3) 〃・〃・一三 株式会社新宿会館
〃(4) 〃・一二・一二 株式会社山起
〃(5) 〃・〃・一七 右新宿会館
〃(6) 〃・一一・三〇 株式会社白樹社
〃(7) 〃・一〇・二五 株式会社アサヒ製作所
〃(8) 〃・〃・二五 〃
〃(9) 〃・一一・一二 〃
〃(10) 〃・一二・一二 〃
原告は、右手形は手持現金と等価交換したものである旨主張するが、≪証拠省略≫によっては、いまだ右事実を肯認するには不十分であり、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そうとすれば、右手形による入金を事業収入によるものではないとしてことさら除外する理由はないといわなければならず、また、右手形の取立委任日が前示認定のとおりいずれも昭和三二年中であることよりすれば、これを昭和三二年分の収入として加算計上すべきであるとの被告の主張は正当といわなければならない。
そうすると、右入金総額一五、四三四、五五二円から右一、四七二、二四六円を控除した金額に被告主張の六四二、五二八円を加算した一四、六〇四、八三四円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(4) 原告名義の大同信用金庫中野支店納税準備貯金口座(二四、〇〇〇円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三二年中における入金総額が二四、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
原告は右入金の二四、〇〇〇円は手持現金のうちから預金したものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金はすべて事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
以上のとおりであるから、昭和三二年分の総収入金額は右(1)ないし(4)の各預金口座のうち事業収入からなされたものと認められる額の合計一五、七四四、六三七円となる。
2 昭和三三年分について
(1) 宮崎幸利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(四一一、三五六円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三三年中における入金総額が四二一、二四五円であること、同口座の昭和三三年三月一七日入金の一、一九四円、同年六月一七日入金の七、四五〇円、同年八月一四日入金の一、二四五円が預金利息であることは当事者間に争いがない。
原告は種々の観点から同口座の預金者は原告の妻節である旨主張するが、同口座の預金者が原告であることは前示認定のとおりであるから、原告の右主張は採用できない。
そうすると、右入金総額四二一、二四五円から当事者間に争いのない右預金利息の合計九、八八九円を控除した四一一、三五六円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(2) 宮崎英利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(口座番号一四三八六)(六一七、六八四円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三三年中における入金総額が六二二、九八九円であること、右入金総額から被告主張の五、三〇五円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は、同口座の昭和三三年二月二一日入金の五〇、〇〇〇円、同年三月一四日入金の一〇〇、〇〇〇円、同月二〇日入金の一〇〇、〇〇〇円、同年四月二一日入金の一二〇、〇〇〇円、同年五月二七日入金の一五〇、〇〇〇円は原告が横田はつ子から受領した貸金の返済金であるから、右入金総額からこれを控除すべきである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額六二二、九八九円から右五、三〇五円を控除した六一七、六八四円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(3) 原告名義の富士銀行中野支店当座預金口座(七、二七二、九二〇円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三三年中における入金総額が七、五六九、〇八八円であること、右入金総額から被告主張の六四二、五二八円を控除すべきであること、同口座の昭和三四年一月二一日入金の四〇、一一八円、同年二月一四日入金の一〇〇、〇〇〇円、同月二五日入金の三二、五九八円、同年三月一一日入金の五、六四四円、同年四月九日入金の六〇、〇〇〇円が昭和三三年分の売上として加算計上すべきことは当事者間に争いがない。
原告は、右入金総額から被告主張のほか、同口座の(イ)昭和三三年七月二四日入金の一〇〇、〇〇〇円のうち八〇、〇〇〇円、(ロ)同年三月一四日入金の九〇、〇〇一円のうち三〇、〇〇〇円、(ハ)同年四月二一日払出の一、九〇〇円、同月七日払出の四五、〇〇〇円、同年五月二九日払出の一、三五〇円、同年九月二二日払出の四、〇〇〇円、同年一〇月七日払出の五、〇〇〇円の合計五七、二五〇円相当額を控除すべきであり、また、(ニ)被告主張の昭和三四年一月六日入金の一九、〇〇〇円、同月一二日入金の二〇、〇〇〇円、同年三月二四日入金の六九、〇〇〇円は昭和三三年分の売上ではないから、これを加算計上すべきではない旨主張する。
しかし、原告の右主張は以下のとおり、いずれも採用することができない。すなわち、
(イ)について
右一〇〇、〇〇〇円の入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は右手形は飯田要三から二〇、〇〇〇円の紙代金の支払として受取ったものであり、その際、右手形の額面金額と右紙代金との差額八〇、〇〇〇円を釣銭として支払った旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
原告が八木康二に対し三〇、〇〇〇円を貸与したことは当事者間に争いがない。
原告は右九〇、〇〇一円のうち三〇、〇〇〇円は八木から受領した右貸金の返済金である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ハ)について
右各払出が原告主張の手形が不渡りとなったことによるものであること、原告がその後右手形金の返済を受けたことは当事者間に争いがない。
原告は返済を受けた手形金を再び同口座に預金した旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ニ)について
≪証拠省略≫によれば、右一月六日入金の一九、〇〇〇円は原告が昭和三三年一二月一六日富士銀行中野支店に取立委任した支払人合名会社栗橋ローソク工場の為替手形による入金であること、右一月一二日入金の二〇、〇〇〇円は右同様昭和三三年一二月二九日右支店に取立委任した光電工株式会社振出の小切手による入金であること、右三月二四日入金の六九、〇〇〇円は右同様昭和三三年一一月一日右支店に取立委任した支払人株式会社アサヒ製作所の為替手形による入金であることが認められる。
原告は右手形および小切手は手持現金と等価交換したものである旨主張するが、≪証拠省略≫によってはいまだ右事実を認めるには不十分であり、他にこれを認めるに足りる証拠もない。
そうとすれば、右手形、小切手による入金を事業収入によるものではないとしてことさら除外する理由はないといわなければならず、また、右手形、小切手の取立委任日が前示認定のとおりいずれも昭和三二年中であることよりすれば、これを昭和三二年分の収入として加算計上すべきであるとの被告の主張は正当といわなければならない。
そうすると、右入金総額七、五六九、〇八八円から右六四二、五二八円を控除した金額に被告主張の三四六、三六〇円を加算した七、二七二、九二〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(4) 原告名義の三菱銀行中野支店普通預金口座(一、二八五、六一二円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三三年中における入金総額が一、二八五、九五七円であること、右入金総額から被告主張の三四五円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は同口座の昭和三三年八月五日入金の七〇、〇〇〇円のうち四五、五〇〇円は釣銭として伊藤喜代治に支払っているから、右入金総額から控除すべきであると主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額一、二八五、九五七円から右三四五円を控除した一、二八五、六一二円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(5) 宮崎一名義の富士銀行中野支店普通預金口座(八九九、〇六六円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三三年中における入金総額が一、五八五、四三六円であること、右入金総額から被告主張の六八六、三七〇円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は右入金総額から被告主張のほか同口座の(イ)昭和三三年九月二四日入金の一〇〇、〇〇〇円のうち六〇、〇〇〇円、(ロ)同年一〇月二四日入金の一〇〇、〇〇〇円のうち七〇、〇〇〇円、(ハ)同年九月六日入金の一〇〇、〇〇〇円を控除すべきである旨主張する。
しかし、原告の右主張は以下のとおりいずれも採用することができない。すなわち、
(イ)について
右一〇〇、〇〇〇円の入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は、右手形は飯田要三から四〇、〇〇〇円の紙代金の支払として受取ったものであり、その際、右手形の額面金額と右紙代金との差額六〇、〇〇〇円を釣銭として支払った旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
右一〇〇、〇〇〇円の入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は、右手形は飯田要三から三〇、〇〇〇円の紙代金の支払として受取ったものであり、その際、右手形の額面金額と右紙代金との差額七〇、〇〇〇円を釣銭として支払った旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ハ)について
原告は右入金の一〇〇、〇〇〇円は町島寿郎から受領した貸金の返済金である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額一、五八五、四三六円から右六八六、三七〇円を控除した八九九、〇六六円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(6) 宮崎英利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(口座番号二六一九四)(一〇〇、〇〇〇円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三三年中における入金総額が一〇〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
右口座の預金者が原告であるか原告の子英利であるかについて当事者間に争いがあるので、まずこの点について判断する。
原告が他にも富士銀行中野支店に英利名義の普通預金口座(口座番号一四三八六)を有し、同口座に預金していたことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、英利は昭和一八年五月二八日生で昭和三三年当時いまだ一五才であり、同人にはなんら所得がなく、原告の家族で収入のあるものは原告しかいないことが認められるからこれらの事実よりすれば、同口座の預金者は原告であると認めるのが相当である。
右につき原告は種々の点から預金者は英利であると主張するが、原告主張の事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額一〇〇、〇〇〇円は原告の事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(7) 原告名義の大同信用金庫中野支店納税準備貯金口座(五二、五一二円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三三年中における入金総額が五二、八二七円であること、右入金総額から被告主張の三一五円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は、同口座の預金利息以外の入金は手持現金のうちから預金したものであるから、その全額を控除すべきである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額五二、八二七円から右三一五円を控除した五二、五一二円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
以上のとおりであるから、昭和三三年分の総収入金額は右(1)ないし(7)の各預金口座のうち事業収入からなされたものと認められる額の合計一〇、六三九、一五〇円となる。
3 昭和三四年分について
(1) 原告名義の富士銀行中野支店当座預金口座(四、四一三、九一二円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の入金総額が五、四〇二、八一六円であること、右入金総額から被告主張の一、一九三、三六〇円を控除すべきこと、被告主張の二〇四、四五六円を昭和三四年分の売上として加算計上すべきことは当事者間に争がない。
原告は右入金総額から被告主張のほか同口座の(イ)昭和三四年三月三〇日入金の一五、〇〇〇円および同年九月四日入金の二〇、〇〇〇円、(ロ)同年六月二六日払出の五、六〇〇円相当額を控除すべきである旨主張する。
しかし、原告の右主張は以下のとおりいずれも採用することができない。すなわち、
(イ)について
右各入金が手形による入金であることは当事者間に争いがない。
原告は右手形は手持現金と等価交換したものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
右払出が原告主張の手形が不渡りとなったことによるものであること、原告がその後右手形金の返済を受けたことは当事者間に争いがない。
原告は返済を受けた手形金を再び同口座に預金した旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額五、四〇二、八一六円から右一、一九三、三六〇円を控除した金額に右二〇四、四五六円を加算した四、四一三、九一二円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(2) 原告名義の三菱銀行中野支店普通預金口座(一、九五八、一三六円)
右預金口座の昭和三四年中における入金総額のうち一、九五八、一三六円が事業収入からなされたものであることは当事者間に争いがない。
(3) 宮崎英利名義の富士銀行中野支店普通預金口座(口座番号二六一九四)(一〇〇、〇〇〇円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三四年中における入金総額が一〇二、四〇一円であることは当事者間に争いがない。
原告は種々の観点から同口座の預金者は原告の子英利である旨主張するが、同口座の預金者が原告であることは前示認定のとおりであるから、原告の右主張は採用できない。
ところで、≪証拠省略≫によれば、同口座の昭和三四年三月一六日入金の七二一円および同年九月二一日入金の一、六八〇円は預金利息であることが認められるから、その合計二、四〇一円を右入金総額一〇二、四〇一円から控除した一〇〇、〇〇〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(4) 原告名義の大同信用金庫中野支店納税準備貯金口座(五五、九八〇円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三四年中における入金総額が五六、三三〇円であること、右入金総額から被告主張の三五〇円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は同口座の預金利息以外の入金は手持現金のうちから預金したものであるから、その全額を控除すべきである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額五六、三三〇円から右三五〇円を控除した五五、九八〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(5) 原告名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座(五八七、三八〇円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三四年中における入金総額が八六四、二六八円であること、右入金総額から被告主張の二七六、八八八円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は同口座の昭和三四年三月六日入金の二〇〇、〇〇〇円は預金相互の移動によるものであるから、右入金総額から控除すべきである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。のみならず、≪証拠省略≫によれば、原告主張の宮崎一名義の預金口座から昭和三三年一二月一〇日払出された二〇〇、〇〇〇円は即日六か月の宮崎幸利名義の「第五四回富士定期預金」とされていることが認められるから、原告の主張は到底採用できない。
そうすると、右入金総額八六四、二六八円から、右二七六、八八八円を控除した五八七、三八〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(6) 宮崎節名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座(一七二、六五五円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三四年中における入金総額が五〇一、六六六円であること、右入金総額から被告主張の三二九、〇一一円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は、同口座の昭和三四年七月一一日入金の一〇〇、〇〇〇円は宮崎一名義の富士銀行中野支店普通預金から昭和三三年一二月一一日払出した一〇一、四八〇円のうちから預金されたものであるから、右入金総額から右一〇〇、〇〇〇円を控除すべきである旨主張する。
しかし、≪証拠省略≫によれば、原告主張の宮崎一名義の預金口座から払出された一〇一、四八〇円は、即日六六、九二〇円が加えられ同支店の別段預金とされると同時に額面一六八、四〇〇円の同支店長振出の自己宛小切手(いわゆる預金小切手)とされて原告に交付され、同小切手は原告が同月八日買入れた株式の支払代金にあてていることが認められるから、原告の右主張は到底採用することができない。
そうすると、右入金総額五〇一、六六六円から右三二九、〇一一円を控除した一七二、六五五円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(7) 宮崎一名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座(六〇、四五〇円)
右預金口座の昭和三四年中における入金総額のうち六〇、四五〇円が事業収入からなされたものであることは当事者間に争いがない。
(8) 宮崎英利名義の大同信用金庫中野支店定期預金(一〇、〇〇〇円)
右定期預金の預金者が原告であること、右預金は昭和三四年中になされたこと、右預金の金額が一〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
原告は右預金は手持現金のうちからなされたものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右預金の一〇、〇〇〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(9) 宮崎節名義の三菱銀行中野支店普通預金口座(一、七三三、一〇八円)
右預金口座の預金者が原告であること、同口座の昭和三四年中における入金総額が二、〇三二、一七四円であること、右入金総額から被告主張の二九九、〇六六円を控除すべきことは当事者間に争いがない。
原告は、右入金総額からさらに同口座の(イ)昭和三四年七月四日入金の三九六、八六一円のうち被告主張の二九六、八六一円を控除した残額一〇〇、〇〇〇円、(ロ)同年九月一五日入金の二〇〇、〇〇〇円のうち七〇、〇〇〇円を控除すべきである旨主張する。
しかし、原告の右主張は以下のとおりいずれも採用することができない。すなわち、
(イ)について
原告は、右一〇〇、〇〇〇円は原告名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座から昭和三四年四月二三日および同年五月六日にそれぞれ払出した五〇、〇〇〇円を合算したものである旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
(ロ)について
原告は右七〇、〇〇〇円は原告名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座から同年九月一五日払出した七〇、〇〇〇円である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額二、〇三二円から右二九九、〇六六円を控除した一、七三三、一〇八円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(10) 宮崎一郎名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座(一四〇、〇〇〇円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三四年中における入金総額が四四〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
右口座の預金者が原告であるか原告の妻節であるかにつき当事者間に争いがあるので、まずこの点について判断する。
≪証拠省略≫によれば、右口座は宮崎節名義の大同信用金庫中野支店普通預金を解約した三〇〇、〇〇〇円をもって昭和三四年一〇月一六日に新規に開設されたものであることが認められるところ、右宮崎節名義の普通預金の預金者が原告であることは当事者間に争いがないから、右口座の預金者は原告であると認めるのが相当である。
しかるところ、同口座の昭和三四年一〇月一六日入金の三〇〇、〇〇〇円が右宮崎節名義の普通預金を解除した払戻金であることは前示認定のとおりであるから、右入金総額から右三〇〇、〇〇〇円を控除した一四〇、〇〇〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(11) 宮崎二郎名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座(三三六、七六二円)
右預金口座が存在すること、同口座の昭和三四年中における入金総額が四四七、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
右口座の預金者が原告であるか、原告の妻節のものであるか当事者間に争いがあるので、まずこの点について判断する。
≪証拠省略≫によれば、右係争年中節にはなんら所得がなかったこと、原告の家族のうち収入のあるものは原告しかいないことが認められるから、同口座の預金者は原告であると認めるのが相当である。
右につき、原告は種々の観点から預金者は節と主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右入金総額四四七、一〇〇円から被告が預金相互の移動による入金であると主張する一一〇、二三八円を控除した三三六、七六二円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
(12) 宮崎一郎、宮崎二郎、宮崎三郎、宮崎四郎名義の各大同信用金庫中野支店定期預金(五五三、〇〇〇円)
右各定期預金が存在すること、右預金がいずれも昭和三四年中になされたこと、右預金の額面がいずれも二五〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。
右預金の預金者が原告であるか、原告の妻節であるかにつき当事者間に争いがあるので、まずこの点について判断する。
右預金の合計一、〇〇〇、〇〇〇円のうち四四七、〇〇〇円が昭和三四年一二月八日宮崎一郎名義の大同信用金庫中野支店普通預金口座から払出された二五〇、〇〇〇円と宮崎二郎名義の同支店普通預金口座から払出された一九七、〇〇〇円であることは当事者間に争いのない事実であるところ、右宮崎一郎名義および宮崎二郎名義の各普通預金口座の預金者が原告であることは前示認定のとおりであること、また、節にはなんら所得がなく、原告の家族のうち収入のあるものは原告しかいないことも前示認定のとおりであるから、右定期預金の預金者は原告であると認めるのが相当である。
右につき、原告は種々の観点から預金者は節である旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認められない。
そうすると、右定期預金の合計一、〇〇〇、〇〇〇円から預金相互の移動によるものであることにつき当事者間に争いのない右四四七、〇〇〇円を控除した五五三、〇〇〇円は事業収入からなされたものと認めるのが相当である。
以上のとおりであるから、昭和三四年分の総収入金額は右(1)ないし(12)の各預金口座ないし定期預金のうち事業収入からなされたものと認められる額の合計一〇、一二一、三八三円となる。
三 そうすると、原告の昭和三二年分の事業所得金額は前示認定の総収入金額一五、三四四、六三七円から当事者間に争いのない必要経費額一二、六八一、五六八円を控除した三、〇六三、〇六九円であり、原告の昭和三三年分の事業所得金額は前示認定の総収入金額一〇、六三九、一五〇円から当事者間に争いのない必要経費額九、四四四、〇三四円を控除した一、一九五、一一六円であり、また原告の昭和三四年分の事業所得金額は前示認定の総収入金額一〇、一二一、三八三円から当事者間に争いのない必要経費額八、六五二、九二八円を控除した一、四六八、四五五円となり、いずれも中野税務署長のした前掲課税処分の事業所得金額を上廻るものであるから、右課税処分を維持し、原告の審査請求を棄却した前掲審査決定には事業所得金額を過大に誤認した違法はないといわなければならない。
四 以上の次第であるから、原告の本訴請求はいずれも理由がないから失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高津環 裁判官 海保寛 裁判官小木曽競は転任のため署名押印することができない。裁判長裁判官 高津環)